愛される自信を君にあげる

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 思わずビクッと肩を震わせて、間に入るように立った三条課長の背中を見つめる。 「どうして……」 「でるよ、おいで」  強く手首を掴まれて、スツールから降ろされる。  手つきは乱暴ではなかったけれど、三条課長の顔に釘付けになっている男性に気を取られていてバランスを崩した。 「こら、ちゃんと歩けないなら抱っこして帰るけど?」 「だ、大丈夫……です」  抱っこしてくれるならそれもいいな。  三条課長に触れられてると幸せで、もっともっと近づきたくなる。  あたしのことを全部暴いて、あなただけのものにしてって。  こんな独りよがりの独占欲を知られたくなくて、三条課長の後ろに立った。  三条課長はあたしの手を強く握ったまま何も言わずに歩きだした。  繋いだ手のひらはしっとりと汗ばんでいて、ハッと短く吐き出される呼吸は荒い。  もしかして、急に電話を切ったあたしを心配して探してくれていたのだろうか。 「お、怒ってますか……?」 「キミを不安にさせた自分にね。模擬挙式の件、聞いたんだよね?」 「あ、はい……」 「笑留の耳に入ったら不安になるってわかってたのに、ごめん」 「いえ、仕事なら……」  仕方ない──そう続けようとすると、三条課長の言葉が被さった。     
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