愛される自信を君にあげる

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 物語のヒロインは、だいたいが麗のような美人で、あたしはヒロインの友達に過ぎない。人生の中で、こんなあたしにも誰か一人という相手が現れるとしても、それはスポットの当たらない場所でのことだ。  いつだってドラマティックに取り上げられるのは、麗と三条課長のような人たちだけだから。  そんなことばかり考えて卑屈になる自分が嫌になる。ため息をつきながら、クルクルとパスタをフォークに巻いて、無言のまま口に運んだ。 「はぁ……でもさぁ、あたしももう二十五歳でしょ? 親からそろそろ結婚はって聞かれるのよ」  麗の言葉に胸がツキンと痛んだ。相手はなんて聞かなくてもわかる。そもそも二十五歳で結婚の話なんて早過ぎはしないか。二十二歳で恋人の一人もいたことのないあたしにはわからないが、やはり麗のような資産家の家では大事なことなのだろうか。 「結婚、するの?」 「ん~あたしはしてもいいかなって思ってるんだけど、笑留に言ったことあるっけ? 彼の話」 「三条課長でしょ? いつも聞いてるじゃない」 「はぁっ!? 何言ってんのっ? っていうか、英臣はた~だ~の幼なじみだってば!」  向かい合わせにパスタを食べていた麗の瞳が驚きに見開かれた。  驚いたのはこっちだ。三条課長でないのなら、誰だと言うのか。 「へっ……え、どういうこと? だって、結婚するって……」 「だからね、付き合ってる彼と! もちろん英臣なんかじゃないから!」     
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