愛される自信を君にあげる

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 もちろん、その先のことなんて妄想ですらできなかったのに、あの時の快感はいまだにあたしの中に燻ったまま残っている。  たまに三条課長の指を思い出してしまい、身体がジンジンと熱くなってしまう。 「みっともない、なんて思ってない。ただ、可愛いなって……笑留のこと好きだなって思ってる」  額に一つ、目尻、頬に順番に三条課長の唇が触れる。  大丈夫だよって、あたしを安心させるみたいに優しいキスだ。 「本当はさ、定石通りにした方が笑留にとってはいいってわかってるんだけど、ごめん……俺にそんな余裕ない」  指を絡められて、手を引かれるままに三条課長の後ろをついていく。  廊下にいくつもあるドアの一つは寝室で、部屋はリビングと同じぐらい広く中央にベッドだけが置かれていた。  月明かりだけがベッドを照らしていることに安堵の息を漏らした。きっと、身体をそう見られることもない。変な顔をしていたらどうしよう。三条課長が気持ち良くなかったらどうしようって、そんなことばかり頭をよぎる。  意識したら、心臓が壊れてしまうんじゃないかってぐらい、高く速く音を立て始める。  怖いって気持ちもあるけど、三条課長の髪を撫でる手があまりにも優しくて、彼の頬にも赤みがさしていることが、あたしを少しだけ落ち着かせてくれた。     
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