愛される自信を君にあげる

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「なんか、って」  もしも三条課長と付き合えたら。  そんなことを考えるだけで、あたしなら幸せの絶頂でしばらく仕事が手につかなくなってしまう。  でも、年は違うけどかなり仲のいい友人だと思っていたのに、麗に恋人がいることすら知らなかった。本人は忘れていた、という物言いだったが何か言えなかった理由でもあるのかもしれない。 「でもさ、うちの親は英臣がお気に入りなわけ。彼氏を親に紹介したことないんだけど、父親が婚約するって息巻いちゃって……このままじゃ結婚相手が英臣になっちゃうのよっ」 「ええっ!?」  一度地獄に突き落とされて、ふわふわと浮かんできているところを再び突き落とされたような気分になった。  あたしなら──あたしだったら。そう考えてもどうにもならないのに。 「でも、あたしなら……結婚相手が三条課長なら嬉しいけどな。麗は贅沢だよ」  いつもなら絶対に言わない言葉を選ばせたのは、こんな思いがあったからかもしれない。綺麗で輝いていて、当たり前のように三条課長のそばにいる麗のこと、ずっとずっと羨ましいって思ってたから。 「じゃあ、笑留が結婚してくれる? あいつと」  どこか楽しげに口を開く麗の言葉に、あたしは耳を疑った。     
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