愛される自信を君にあげる

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 気持ちよすぎて、何も考えられなくなる。淫らに悲鳴に近い声をあげている顔なんて、明るい場所で見せられるはずがない。  あたしの気持ちを悟ってくれたのか、三条課長の唇は軽く触れるだけで離れていった。  それはそれで物足りないような、寂しいような気分になる。 「もっと、して欲しい?」 「して……ほしいです」  三条課長の顔が嬉しそうに綻ぶ。  好きだ、可愛いって、言葉と態度で愛情をたくさんもらった。  まるで物語のヒロインになったみたい。  主人公はあたし、恋人は三条課長。  王子様みたいな彼と恋に落ちて結婚する。まだしばらくの間は二人っきりで過ごしたい。  何年かしたら、子どもができて家族が増える。  ずっと、ずっと年老いても変わらずにそばにいて──。  なんだか、それが妄想ではないような気がする。  こんなに幸せでいいんだろうか。 九  寝不足で会社に行くのは正直キツかった。  けどそれ以上に、頭の中が幸せな気分でいっぱいだったから、披露宴中に子どもたちが走り回ってスタッフとぶつかるというハプニングが起きても、焦らずに対応できた。  打ち合わせ中に、引き出物を巡って新郎新婦が喧嘩を始めても笑顔は崩さなかった。  今朝はバタバタしていて三条課長が模擬挙式を受けるのかどうか、結局結論を聞くことはできなかった。     
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