愛される自信を君にあげる

72/92
前へ
/93ページ
次へ
 複雑ではあるが、今後予定してるお客様の披露宴を悲しいものにしてしまうよりずっといい。  何年後かに思い出した時、笑顔で思い出のページを捲れるように。  ただ、一つ気になるのは麗のこと。  ここ何日かは話をするタイミングがなかったけれど、今日久し振りに遠目に顔を見た。様子がおかしいことは一目瞭然だった。  化粧っ気がなく、お客様との打ち合わせ中も眼鏡をかけていないし、髪はおろしたまま。  それでも美人であることに変わりはないのは羨ましい限りだが、笑顔もなく憔悴しきっていた。  もしかしたら、恋人とのことでお父さんと何かあったのかもしれない。  三条課長が模擬挙式を断ろうとしただけで、うちの会社に圧力をかけてくる人だ。  麗から直接聞いたわけじゃないけど、俳優の卵だという恋人との付き合いを認めてもらえなかったのかと考えてしまう。  話がしたくて、なんとかタイミングを図ったけどどうにもならなかった。  ヘルプに入る披露宴も違えば、担当してるお客様も違う。  どうしたって忙しいこの時期、私語に時間を取れるほどの暇はなかった。  あたしにできることなんて、何もないってわかってるけど、それでも何か力になりたかった。  だから、トイレに行くと行っては休憩室のあるフロアに麗の姿がないかと探していた。     
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4560人が本棚に入れています
本棚に追加