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けど、あたしにとって彼の隣にいられるのは、次元が違う喜びだ。
他にはもう何もいらないとさえ思うぐらい。
「ほんと、スルーするよね」
何故かため息混じりにしみじみと呟かれて、三条課長の距離が近づいた。
「……ああ、そうだ。麗が、不安にさせてごめんって言ってた。笑留と直接話したいみたいだったけど、邪魔されたくなくて断った。ごめんね」
「邪魔って……」
「笑留の声、誰にも聞かせたくない。我慢できる?」
耳元で囁かれた声は官能めいていて、あたしはまたこんな時ばかり意味を正確に理解してしまう。
「平日なので……両隣とも、誰もいないと思います」
多分抱きしめられたら、我慢なんてできない。
三条課長の手は魔法みたいに、あたしを蕩けさせてしまうから。
「いいこと聞いた」
ニヤリと口角を上げた三条課長の顔が近づいた。
絨毯の上に押し倒されて、唇が降りてきた。
きっと、これからたくさんの〝可愛い〟と〝好きだ〟があたしの中に注がれる。
ラストエピソード
「えっ、えっ……なにっ、どういうことですかっ!? 三条課長っ!」
「あれ、英臣さんって呼んでくれないの?」
「いや、だって……」
それどころじゃないっていうのが、あたしの正直な気持ち。
だって、ここは会社である結婚式場の新婦控え室。
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