愛される自信を君にあげる

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「麗がそんなこと言ったって、三条課長は麗と本気で付き合いたいって思ってるかもしれないじゃない……」 「それはない。だって英臣、あたしが付き合ってる彼知ってるし……っていうか、あいつのタイプ、あたしみたいなのと正反対だから」  正反対って、ブスで自分に自信がなくて、他人を見たら羨ましいばかり。そんなあたしみたいな女がタイプだとでも言うのか。  そんなの、ありえない──。 「麗、そんなことよりランチの時間終わっちゃうよ? ほら、仕事戻ろ」  放置され、すっかり冷えて美味しくなくなったパスタを急いで口の中に入れると、食べずに残された麗の皿を横目に立ち上がる。  この時は、いつものタチの悪い冗談だとばかり思っていた。 二 「……白崎さん?」  背後からかけられた声で、それが誰のものかわかってしまった。  麗と一緒の時にしか聞けない、耳心地のいい低音ボイス。 「あ……はい」  どうしよう、緊張で口の中がカラカラだ。  本当はもっと可愛く笑いながら振り向きたかったのに、唇を噛みしめているせいで仏頂面で低い声になってしまう。  麗が近くにいてくれれば、まだ普通でいられたのに。  しかも、午前中に明日の披露宴の打ち合わせを終えて、まだ昼食にありつけてはいない。     
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