愛される自信を君にあげる

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 あたしがなんでこんなに慌ててるかって、別に何か失敗したってわけじゃない。  普通にいつもどおり出社したら、別の部署である三条課長に呼ばれて困り顔でいると、どうやら上司も知っているみたいで、行けと目配せされた。  何だろうって後をついて行くと、着いた先は人気のスカイチャペルがある屋上階の新婦控え室だった。  数人のスタッフに無理やり服を脱がされて、三条課長は部屋を出て行ってしまったんだ。  あたしの服を綺麗に畳んでくれているスタッフも何やら複雑そうな表情だ。  一体何なんだろうって不安に思いながら部屋の中を見回すと、壁に掛けられた見慣れた純白のドレス。  このドレスに身を包んだ新婦を一体何人見ただろう。  どうかずっとお幸せに、思うのは毎回同じこと。  あたしもいつか、なんて夢だったけど。  気づけば、ウェディングドレスに着替えさせられていた。 「なんで……?」 「新郎がお待ちですよ」  皮肉めいて聞こえるのは気のせい?  あたしは、真っ白のヒールを履いてスタッフの腕を掴む。  新婦を案内するときに立つ、チャペルの両扉の前。  いつも進行の説明をし、新婦のドレスやベールを直しながら、そっと脇に立っているその場所だ。 「笑留」 「えっ!? お父さんっ!?」     
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