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倫太郎はまたいつの間にか有栖川を見つめていた。
「嬉しいんだけど、ちょっとそれ俺の事見すぎじゃない?」
刹那、ゴォッと音を立ててビル風が隙間を通り過ぎていった。
木々がざわつき桜の花びらが一斉に舞った。
風が収まるのを待っている倫太郎の視界に映ったのは桜の木の下で花びらに包まれた有栖川。
何処か、色気のある表情を見せ空を見上げている有栖川に倫太郎は心奪われていた。
「すっげぇ風。大丈夫か?」
顔色を伺う自分の存在にしばらく気が付かず、ボーッと何処かを見ていた倫太郎を見かね瞬殺的にキスをした。
途端に意識が戻った倫太郎は「あ、ああんた何を!!!」自分のおでこに手を置いて勢いよく有栖川から離れ、桜のまで逃げ込んだ。
「唇にしたいところを我慢してでこにしたんだからなぁ。」
「そ、そういう問題じゃっ!」
「ボーッとしてた倫太郎が悪い。」
「そ、それは。」
「何考えてた?」
有栖川は倫太郎の隣に立った。
キスをした事により、より一層警戒をされてしまいなかなか距離が縮まらない。
しかし有栖川は倫太郎の中で変化が少しは起きていると漠然とした自信はあった。
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