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準備室に顔だけだした生徒は、あたりを見回している。 「大丈夫。今は俺だけしかいないから。」そう言ってまた手招きをした。 どうにもご機嫌が斜めな生徒は、有栖川から距離を取って椅子に腰かけた。 「有栖川先生。どうして僕をここへ呼んだんですか?」 「はい??」 有栖川は首を傾げながら、すっかり冷えてしまったコーヒーを口に含んだ。 「えっとぉ、確認するけど武田倫太郎君だよね?」 「そうですけど。」 「俺の名前、知ってる?」 「三年生のどこかのクラスの先生ですよね。名前は有栖川先生。」 「うん。そうだけど、他には?」 「他に何かあるんですか?」 淡々と話を進める目の前の生徒は、自分の恋人であることをすっかり忘れてしまっている。 それどころか、自分のクラスの担任だという事すら忘れてしまっているようだ。 「俺、お前のクラスの担任じゃん?」 「違います。本郷先生です。」 「え、本郷先生って確か……。」 「二年六組です。」 「どう言う事?」
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