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眉間に皺を寄せながら、ふと桜の木に視線を向けた。
「ん?」
先程まで蕾だった桜が花を咲かせている。
「うそ。桜が咲いてんだけど。」
「咲いてましたよ。数日前から。あの、用がなければ戻っていいですか?」
「あぁ…うん。」
失礼しますと言って、部屋を出て行った生徒。
有栖川は、生徒が座っていた椅子に力なく座った。
「どう言う事?」
しばらく考え込んだ後、再び窓側に向かい窓に手をついて脚を縁にかけると、ひょいっと外に飛び出し桜の木の下に立った。
「さっきまでは花なんて一輪も咲いてなかったよな。それが咲いててしかも綺麗。」
倫太郎の話し方も普段なら“俺”と言う所、“僕”と言っていたし表情や仕草もいつもと違っていた。
まるで出会った頃の倫太郎のようだった。
勢いよく振り返り、急いで室内に戻り自分の机の上のカレンダーを見た。
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