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倫太郎の心臓は煩いほどにバクバクとしている。
秘密の場所でヒッソリと昼寝を楽しんでいたのに、よりにもよって学校いち人気のある教師に声をかけられた。
驚きすぎて塩対応してしまったと若干後悔している倫太郎の横を、女子生徒に両腕を握られ引きずられている有栖川が通り過ぎていった。
慌てて道を開けながら、視線をあげると有栖川と目が合ってしまった。
“今すぐ俺を助けてくれ”という無言の訴えを無視して三人とは反対方向へ歩き出してしまったが、立ち止まると大きく深呼吸をして振り返った。
そして、話をしながら何処かへ行こうとしている三人に向かって「ま、待ってください!」と大きな声を上げた倫太郎は、何も考えずに呼び留めてしまっ た事に後悔した。
「お、武田じゃぁん。確か分からない所があるから教えてくれって言ってたよなぁ。」
するりとかわし倫太郎の前に立った有栖川。
後ろでまだ文句を言っている女子生徒を置いて、二人はまた準備室に向かった。
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