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「お武家さま、たいそう綺麗な桜なのに良いんですか? 」
額に手を当てて、咲き乱れる桜の巨木を見上げ男が言う。
木漏れ日の合間に、散る花びらが乱舞している。
その桜は、この辺では有名なお武家さまの家の大桜だった。
幹の太さは大人が二抱え程もあった。
「ああ構わないよ。お前の噂が本当ならね」
「嘘じゃあないですよ」
「もし嘘ならお前の首を跳ねるが、それでも本当だと言うのかい?」
「ええ勿論! あっしは嘘は申しません」
「良いだろう。この桜の木の下に娘が埋まって居るというなら、お前が掘り起こしてみよ!もし嘘なら、有らぬ疑いをこの拙者に掛けた罪を命で贖って貰うぞ!」
「ええ、結構でさあ」
男はそう言うと、持って来た道具を広げた。
「おいおい。お前、沢山道具をもってきたねぇ」
「ええ、繊細な作業ですから」
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