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男は夕暮れ頃に、やって来て
「お武家さま、やはり埋まってました。天女も逃げ出すようなベッピンさんでーー」
と言った。
「なにっ!? あの桜の木の下に娘が! 本当にかーー?」
男の戯言かと思ったが、本当だったのか?
だが、おかしい。
埋まって居れば、死して直ぐに掘り起こさない限り美しいなんて事は無いだろう?
桜の木の周りには、先に考えたように、掘り起こした跡など無かった。
有らば良くて腐って腐乱してるか、普通は白骨だ。
そもそも、なぜあの男は娘が埋まっている事を知っていたのだ?
「ーーこれはっ!?」
男に案内されて、お武家さまは桜の木のあった場所に行き驚きの声を上げる。
確かに、天女も逃げ出す美しい娘が居た。
だが、良く見ると
……違う。
辺りには、木の切りカス、削りカスがーー。
これは……、
「お前は、これを桜の木から彫りだした訳か! 」
娘は掘り出されたのではなく、男によって桜の木より彫り出された木彫であった。
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