8人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
前世では当時100倍の競争率中、空軍学校に入学出来たくらいには地頭が良かったアンナ。
今生もそれと同じように、勝ち取ればいいのだ。国家資格を。
時代背景が違うだけで、前世と大差ない。必ず竜に乗ってみせる。そして、空へと……っという強い気持ちがアンナの中にふつふつと沸いてくる。
「──待っていて下さいねっ。必ず、君に……君達に、乗ってみせます!」
感極まって、ワイバーンに向かってそう誓言する。その微笑ましいっというべきか若干悩ましい姿に、竜騎士のシュミット少尉は苦笑いを浮かべる。
ワイバーンの方は、え? 俺?? みたいな感じで困惑の色を示すが、アンナにはどうでもいい。
彼女は今、飛竜の背中に股がり空高く飛翔する自分の姿を脳裏で幻視する事で、大変忙しいのだ。
「ま、まぁ、本気なら頑張ってね。……ある程度の規模の都市になら、軍学校や私設ではあるけど専門の学舎なんかもあるからさ」
「本当ですかっ!?」
しめしめ、良いことを聞いたっと顔に書いてあるような悪どい顔を浮かべる幼女。だから、年相応の子がするような顔では……。
ここから一番近い地方都市は何処だっただろうか? とこの世界に来てからで積めんできた知識をひっくり返して、周辺都市の名前を探す。
「……畜産農業都市、『フェルトベルン』っ」
「あぁ、あそこは竜の餌になる家畜を育てているから、軍学校や私設学舎もあると思うよ」
「やった!」
アンナが空へと飛び立つ為の道筋は、すぐそこにある。その事実に彼女は心の底から歓喜する。喜びの雄叫びを上げたかったが、グッと我慢する。
(──私は帰れるのだ、あの空に。私はまた、飛ぶ事が出来るのだ。どんなに可能性が低くても構わない。諦めない。私は、飛ぶために生まれてきたのだから……)
自分は飛ぶために生まれてきた。人の身でありながら、そう確信しているアンナ。
確かに、前世のアンナを知ればそのように感じる者は多いだろう。
何せ、前世のアンナ……つまりは転生する前の名は──
最初のコメントを投稿しよう!