竜を求めて

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   とある金髪幼女の朝は早い。  日の出の少し前に起床して、水場で手洗いうがいを行う。夜の間に出来た口の中の不快感を濯ぎ流して、搾りたての生臭さがまだ残る牛乳を一杯飲み干す。  そして、簡単な朝食を頂く。ブレートヒェン(※パン)に、バターとジャム。それからハムとチーズにゆで卵。そんでもって、牛乳だ。  慌てずにゆっくりと、丁寧かつ綺麗に朝食をぺろりと平らげる。食後の余韻に、コーヒーを……ではなく、牛乳を飲む。  余韻が無くなると同時に、朝の体操をようやく顔を出した太陽を眺めながら行う。  これが、彼女──アンナの毎朝の日課である。無理なく自由に体が動くようになった四歳くらいから欠かさずに繰り返していのだ。  その功あってか、今生では今まで重大な病気どころか、風邪一つ引いたことがない。万年健康児という訳だ。  さて、アンナが竜と運命の出会い(?)を果たしてから半年程の経過しているのだが、彼女は親里離れて地方都市フェルトベルンに居る。  俗に畜産都市と呼ばれるこの都市は、その名称に違わず畜産を営む農家が多い。国内でも指折りの第一次産業の聖地である。  作物を生産と家畜の出荷量は国内随一である。帝国の地方都市であるフェルトベルンは、実は帝国の縁の下の力持ちなのだ。  そして、もう一つフェルトベルンには国内上位に食い込め職種があった。  それが、竜師である。  言ってしまえば、 竜師とは竜種のブリーダーである。家畜が多くて新鮮な肉が豊富なフェルトベルンでは、竜を育てるのにはもってこいの環境。  そのため多くの竜師がこの都市か、その近郊に本拠地を置いている。  その数多居る竜師達の中の一家族に、アンナは身を寄せている。つまりは、弟子入りした訳だ。竜師見習いとして。  
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