竜を求めて

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   帝都よりも、ある意味ではすごい地方都市フェルトベルン。  アンナは到着してからすぐに竜師を訪ねて、自分を雇ってくれる所を探した。  勿論、初めから上手くいかなかった。子供に竜の世話をさせるなど、正気の沙汰ではないからだ。  飼われている存在とはいえ、相手は生物界の頂点に君臨するモノ。生身の人間はともより、幼女が世話係を出来る訳がない。  そう。普通の幼女には無理だ。そして、言わずもがなアンナは普通ではない。  まあ、それを赤の他人である竜師が知る筈もなく、問答無用でバッサリと切られた。当然である。むしろ、ここで許可を出す輩が居たら、然るべき機関に即刻通報するべきなのだ。  話すら取り合ってもらえないアンナは、仕方なく強化魔法による身体能力を見せ付ける事で、彼らからの理解を求めた。  しかし、それでも子供に仕事をさせる。ましてや、生き物の、竜の世話を……この事に竜師達はなかなか首を縦に振らなかった。  誰からも雇い入れてもらえずに時間も遅くなり、そろそろ宿を探さないと不味い時間帯になってしまい、仕方なくアンナは民宿へと向かう事になった。  だが、その時…… 「……僕の竜舎で、働かないかい?」  一人の青年が声を掛けてくれた。  その名を、エリアス・シェーファー。二十代前半の若手、というかひよっ子の竜師であった。  仮に、この時エリアスが声を掛けていなければ、八歳の幼女が竜師見習いになる事はなく、数日後には路銀も尽きて、志半ばで帰路に着いていただろう。  これは、紛れもなく運命の分岐点だったのだ。このエリアス・シェーファーが居なければ、ここからの歴史はかなり変わったモノになっていたのだろう。  しかし、そんな“もしも”は起こらない。何故ならアンナは…… 「──ッ! ……よろしくお願いしますっ!」  出会ってしまったのだから。己の運命を宿命に変えた人物に。    
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