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お湯を掛けられた老竜ジークは、猫のように気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
アンナはジークの下顎から腹部まで伸びる傷跡をそっと撫でてる。痛々しい傷だ。翼が千切れたりしなくて良かった、と思うアンナ。
若い時に空が飛べなくなるのは、竜としてとても辛い事だろうから。今のジークは衰えてしまって飛ぶ事は出来ないが、全盛期は戦場の覇者としてブイブイいわせていたらしい。
前世でアンナも大怪我を負ってしばらく飛行機に乗れない時期があったので、怪我をした当時のジークの事を思うと何となく愛着が湧いてしまうのだ。
老いた英雄へ労りと共感から愛着で、アンナは少しばかり老竜ジークを贔屓している節がある。まあ、この程度はもののついでなので、贔屓とは言えないかも知れないが。
それにジークは、エリアスの竜舎の中では唯一、アンナに対する態度が柔らかい。
それを彼女は懐かれているからだと思っている。だが実際にはそれとは違う。ジークからすれば尊重し合う戦友的な感覚なのである。
そして、その事実を彼女が知る事は勿論出来ない。
竜達とのすれ違いが多い竜師見習いアンナ。だが、竜達の表情を見ただけで機嫌が良し悪しが分かったり、何を望んでいるか分かったりと、竜師としての腕は良い。
まずほとんどの者が、竜の表情など読み解けないのに、アンナはそれに対してかなり敏感だ。しかし、竜達から向けられる敬意には気が付かない。
敏感なのか、鈍感なのか。なんとも微妙な感受性 を持っているアンナ。
まあ、彼女の才能と技術が本当の意味で輝くのは、竜の世話ではない。竜の気持ちが多少分かるのは、前世からの経験と空を飛ぶっという共通点があるから、何となく分かる、という推測というか無意識下での同調による共感が為せる技……。
アンナの本領は、飛行機による空中飛行。
それも、他の熟練パイロットが青ざめるよな、変態機動を得意としている。
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