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啜り泣きと拍手のなか、夕貴を再び抱き抱えバージンロードをゆっくり来客に頭を下げて戻っていこうとすると、
誰からともなく来客の手でアーチが作られた。
その中を夕貴と二人で歩く。
「夕貴…、目を覚まして。幸せになる競争よ!早く起きないと私の不戦勝になるじゃない。」
「そちらもご結婚おめでとう。夕貴から聞いてたよ。」
夕貴の友達の七海さんだ
確か夕貴は彼女の結婚式に呼ばれてた筈だ
「うん、高村くんがんばれ。好きな人の傍にいれば夕貴はきっと目を覚ますよ!」
「うん、そうなるよう頑張るよ。」
「浅井さん、あなたほんとに綺麗ですわよ。旦那さんもいい男だわね。起きないと言えないじゃない。私が誉めるなんて今しか無いですわよ。浅井さん!」
「ありがとうございます。」
この人は同僚だったな
確か、最初のマンションで見た人だ
「優人、夕貴はお前に託したんだからな、幸せにしろよ。」
「…敦」
しばらく見ないうちに男らしくなったな敦。
「頑張れよ!」
敦からもぎ取るように夕貴を奪ったんだ。
だのに、こいつは俺に夕貴を頼むと言った。こいつのためにも夕貴を幸せにしなくちゃいけない。
敦、約束は守るよ「ああ、ありがとう。」
来客の言葉に一つ一つ応えながらゆっくりアーチを潜り抜け二人でドアを出た。
外は二人を祝福するかのように雲一つ無い青空で
眩しいくらい明るかった。
目を細めて空を見上げると、青い羽を広げた小鳥が河川敷の方に飛んで行った。
「夕貴、青い鳥がいたよ!」
声をかけながら夕貴に視線を向けると
透明感ある肌は光の中でますます白く輝いていて、瞼はやっぱり動かない。
自分腕の中から消えていくような不安を感じて
思わず腕の中の夕貴に唇を重ねた。
どこにもいかないでくれ
君がいてくれるだけで僕は幸せなんだから…
夕貴
愛してる
そう心の中で囁いた。
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