ある視線

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ふっと見上げた視線のさきで ぼくは そのひとと目が会った 真摯な目   その目に写る 今の ここは ここの雑然とした診療所の 景色は いったい どんな姿をしているのでしょう     (見つめることは ぼくにとっても   いつも かすかな疼きでした)   そのひとの瞳も フッとたじろいだ    車椅子のそのひとは 見ることの他に 生きる仕事も なさそうなのに 世界への尽きない思いも  あるはずなのに 申し訳なさそうに 視線を逸らした   (見つめることは ぼくにとっても   いつも かすかな疼きだった) そして あまたある 星の数ほど視線は 世界へ注がれているのに   その目は なぜそんなに あなたの内面を 写し出すのでしょう . 
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