冬に来た、突然の別れ…

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1週間が長く感じたことはなかった。 約束の水曜日、夕方6時に海老名駅... 地元の駅だから、同級生に見られるかも知れない。 そう思うと、不安になってきた。 「ごめん、待たせちゃったね」 そういって現れた「彼」はラフだが、スーツを着ていた。 相変わらず足に装具はつけているものの、杖は使っていない。 「大丈夫だよ。っていうか、杖、使わないの?」 「杖、嫌いなんだよ。使わなくても歩けるし。 ボーイスカウトの時は、逆に杖が邪魔になるんだ」 お店につくと、そこは靴を脱ぐタイプの店だった。 「ねえ、大丈夫?」 「大丈夫だよ。家では装具つけてないし。 あ、でも下駄箱に入らないか… すみません、これ、預かってもらってもいいですか?」 店員に靴を頼むと、彼は何の問題もなく席まで進んでいく。 心配しかなかった。 これでお酒を飲んでも大丈夫なのだろうか? 席に着くと、メニューを見ながらいろいろと頼んで行く。 「飲み物はどうしますか?」 店員の言葉に「彼」は 「そうだなぁ…ジントニックを1つ。君はどうする?」 「じゃあ、カシスオレンジをお願いします」 店員が下がると、心配になっていたあたしは「彼」に聞いた 「本当に大丈夫?この間みたいに家まで送らないとダメかな?」 「家まで?無理だよ。だって僕の家...愛川だもん」 「え......愛川って、遠いじゃん!」 「大丈夫。弟に迎えに来てもらうから」 「いや、そういう問題じゃないって...厚木でもよかったんだよ? なんで海老名にしたの?」 「海老名はね、友達がお店やってるとこあったから」 「それってこのお店?」 「違うよ。別のところ。友達のところには行けないんだ...」 「?よく分からないんだけど...」
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