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「それ、弟さんは知ってるの?」
「お互いにはっきり話した事ないからなぁ...どうだろう?」
「家の場合はね、純が...家の弟ね。『知的障碍』を持ってるけど、
あたしは別に困った事はなかったかな...
だって『障碍者』がいても「それが当たり前の世界」だと思ってたから。
介護福祉士の学校に行く前はね、英語の教師になりたかったの。
でも、高校で大学の推薦入試に必要な「評定平均」が0.2足りなくって。
それでも専門学校の推薦が受けられるってわかったから、特待生入試受けたの。
まあ、特待生にはなれなかったけど、合格はしたから。そのまま専門に行ったよ。
そこで、いろいろな事を学んでいくうちに「介護福祉士も面白い」って思ったから...
誠一さん、1度弟さんときちんと話してみたら?
家は...純に相談してもちゃんとした答えは返ってこないけどね...」
本音だった。普段から自分の弟と接していたから、どんな障碍者がいても
それは『当たり前の世界』という認識しかなかった...
身体障碍者も、車椅子の人も、視覚障碍者も、聴覚障碍者でも、
一緒に生活する事に違和感なんてなかった。
「君は強いね...キャンプの時に肩貸してくれた時、俺びっくりしたよ?
『なんでこんなに簡単に初対面の人に手を貸せるんだろう?』って...
しかも、次の日の朝に『自分も障碍持ってるから』って言われて、
『何処に障碍あるの?』って思ったし。
しかもあんなにフレキシブルに動いて、臨機応変に対応してさ、
山登りの後でキャンプファイアーのプログラムのミーティングに出た子って、
ボーイスカウト以外の子では初めてだったんだよ...
だから座間の鈴本さんも、家のリーダーもみんな驚いてた。
『あんなに臨機応変な対応をするボランティア見た事ない。
しかも家族が参加者って言うのも初めて知ったよ』って...
弟と話し合いか...そうだね、やってみるよ」
あたしの知らないところで、ボーイスカウトのメンバーには
あたしの情報がかなり飛び回ってたらしい...
来年からのボランティア、どうしよう...行きづらいなぁ。
そんな事を思うようになってしまった。
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