1人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、約束を果たすための春...
桜が満開になると、あたしは「彼」との約束を、毎年実行している。
月の綺麗な夜、公園の桜の木の下にあるベンチに座ると、
桜の枝越しに空を見上げる。
「今年も来たよ。2人とも...」
そう言って微笑むと、カバンの中から、
ロゼのシャンパンとグラスを3つ取り出した。
グラス3つにシャンパンを注ぐ。
そしてベンチに2つ置き、1つはあたしが手にする。
「おばあちゃんと誠一さん、同じ日にそっちに行っちゃって...
あたし1人じゃ寂しいじゃん。しかも誠一さんに至っては
飲みに行く約束、先延ばしにしてさ...」
2つのグラスを見つめて、つぶやく。
そして空を見上げ微笑むと、ベンチのグラスに自分のグラスを当てる。
「2人とも、約束は果たしたよ」
「彼」が死んでからは、桜の木の下でロゼのシャンパンを飲む...
これがあたしと「彼」との約束...
そこにおばあちゃんが増えただけのこと...
もう10年以上、続けている「約束」だ。
2018年春。今年も、もうすぐ桜が咲く。
桜が満開になったら、ロゼのシャンパンとグラスを持って出かけよう...
約束のあの場所へ...
最初のコメントを投稿しよう!