そして、約束を果たすための春...

1/1
前へ
/20ページ
次へ

そして、約束を果たすための春...

桜が満開になると、あたしは「彼」との約束を、毎年実行している。 月の綺麗な夜、公園の桜の木の下にあるベンチに座ると、 桜の枝越しに空を見上げる。 「今年も来たよ。2人とも...」 そう言って微笑むと、カバンの中から、 ロゼのシャンパンとグラスを3つ取り出した。 グラス3つにシャンパンを注ぐ。 そしてベンチに2つ置き、1つはあたしが手にする。 「おばあちゃんと誠一さん、同じ日にそっちに行っちゃって... あたし1人じゃ寂しいじゃん。しかも誠一さんに至っては 飲みに行く約束、先延ばしにしてさ...」 2つのグラスを見つめて、つぶやく。 そして空を見上げ微笑むと、ベンチのグラスに自分のグラスを当てる。 「2人とも、約束は果たしたよ」 「彼」が死んでからは、桜の木の下でロゼのシャンパンを飲む... これがあたしと「彼」との約束... そこにおばあちゃんが増えただけのこと... もう10年以上、続けている「約束」だ。 2018年春。今年も、もうすぐ桜が咲く。 桜が満開になったら、ロゼのシャンパンとグラスを持って出かけよう... 約束のあの場所へ...
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加