北帰行まで

　例年は二月の下旬頃から白鳥の北帰行(ほっきこう)が始まるということだが、寒波の影響で遅れていたらしい。今月に入りようやくそれが始まったのだと、ローカルニュースが伝えていた。
　池に浮かぶ水鳥の群れの中から、一羽の白鳥にカメラがズームアップする。
　合図を送るかのように空に向けて甲高い鳴き声を響かせ、羽をばたつかせた。何羽かの白鳥がそれに呼応する。水面を蹴りながら助走をつけ一羽が飛び立つと、十数羽がそれに従っていった。
　夕日を背に編隊を組んで空を行くその美しい情景を、私はぼんやりと眺めていた。
　いっしょにこたつでそれを見ていた美咲が、あれは田尻池であると教えてくれた。その田尻池というのは家から近いはずだという。以前に担任の先生が話していたそうだ。ネットの地図検索をしてみると、確かにそう遠くないところに見つけることができた。
　明日の休みは天気も良さそうだし白鳥を見に行くのに絶好の機会である、と美咲は主張するのだった。