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何を言われているのか分からず、実乃里は自分の袴姿を見下ろして言った。
「あの、私卒業式帰りなんでこんなカッコしてますけど、普通の大学生です。あ、大学生って、もう卒業して4月からは」
「やはりか」
腕を組んでいた彼はわずかに眉を寄せる。
「人の身で、この宴が視える方がおられようとは、少々羽目を外し過ぎたやもしれぬなぁ……」
独り言のように呟く彼を前に実乃里は首を傾げる。
何だろう。この人。確かに飲んではきたけど、こんな幻を見るほどは飲んでいないはずだけれど。
「あなたは?あなたもお花見に来た花なんですか?」
たずねると彼は微笑んだ。
「中にもたくさん居りますよ。折角だから見物していかれますか?」
「はぁ……」
「……さあ、どうぞ」
柔らかな物言いに絡め取られるように、手を取られその森の中に草履の足を踏み入れた。
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