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あの冬の日、俺は桜の木の下にアイツの死体を埋めた。 数日前のことだ。 俺は由紀子(ゆきこ)の彼氏を殺すことを決めた。 由紀子はただの友達でしかない。 それでも俺は由紀子を愛していた。 由紀子は俺になど興味がないとも知っていた。 だから由紀子に彼氏ができたと聞いた時は悔しいながらも、どこかでやっぱりなと思った。 それでも由紀子が幸せになればと、、、 だが、そんな希望も崩れた。 その日、俺は見てしまった。 由紀子の彼氏が他の女と手を繋いで街を歩いているのを、、、 そして、キスをしているのを、、、 由紀子の泣き顔が浮かんだ。 怒りが止まらなかった。 俺は例の神社で願掛けをした。 人を殺すのに願掛けなど、理に叶っていないと思うかも知れない。 それは俺も知っている。 だからこれは、ある種の決意表明でしかない。 帰りがけに御神籤を引いた。 『大吉』 ただ、その下の細かいところには 『思い通りにはならず』の一文があった。 俺は笑った。 上等だ。 アイツを殺して、でも俺は捕まるということだろう。 それでも、、、 由紀子が幸せになるのなら、、、 ふと、境内に一本だけ植えられた桜の木が目に付いた。 「次に桜の花が見れるのは、一体いつなんだろうな」     
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