櫻と姪と父と。

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 一人、足りない。  奈良と三重の家族が集まると、車の乗車制限人数をどうクリアするかで話し合いをしていたのがつい先日のようだ。今ではすんなり一台の車で収まってしまう。 その空虚感はまだ私から抜けない。  帰路に着こうと、川べりを歩いているうち、野球で活躍する直と、兄、元々足の速い母はどんどん先に行き、少し体調が悪くて足の遅い私と、出店を覗いたり花びらを拾ったりして歩く澪は、しっかりと手を繋いで母の帽子の柄を目印に後方を歩いていた。 「澪ちゃん、凄い花吹雪やね。おじいちゃんと一緒に見たかったね」 と私が言うと、澪は前を向いたまま、 「あんな、澪はな、おじいちゃんのこと思い出さんようにしとんの。おじいちゃんのこと考えると、かわいそうやし、悲しくなるの」 と呟いて、繋いだ手に力を込めた。  かえって辛い思いをさせてしまったか・・・と、少し反省した・・・その時。
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