櫻と姪と父と。

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 一人の老人が私たち二人の横を通り過ぎた。  目の覚めるような緑色のカーディガンを纏い、ハンチングを被った、小洒落た老紳士であったが。  ・・・お父さん?  背格好といい、歩き方の癖といい、少し口角を上げたときの微笑の表情は、父そのもの、だった。どちらかというと茶系やグレーの服を好んだ父、であったが。  そんなはずはない。他人の空似、という以前に私の錯覚、思い込みだろう・・・と私は黙って歩いた。しかし・・・・・・
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