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太陽を捉えて追いつづけるモータードライブのように、小笠原を視線に捉えて離さない。
小笠原樹は春臣にとって、決して翳ることのない唯一の太陽だ。
「軽くストーカー入ってるよな、俺」
などと自嘲気味にひとりごちる。小笠原の姿を十分に堪能して、さて帰り支度でもするかという時に、普段は一人きりで練習をしている彼の元に駆け寄る人物があった。
一歩足を踏み出すごとにふわりふわりとポニーテールが左右に揺れる。小脇にクリップボードを抱えている。マネージャーだろうか。小笠原に何か話しかけているようだが、声までは聞こえない。
小笠原の手がそのポニーテールの頭をぽんぽんと触った瞬間、胸の奥にちりっと痛みが走った。
みっともない嫉妬だ。
自分はこうしてただひっそりと遠い場所から眺めているだけだというのに、話しかけ、笑いかけ、触れてもらうことさえできる人物がいる。
春臣はシーロスタットの反射鏡をぐるりと回転させ、光を小笠原の足元に落とした。気づいてくれるのか、賭けのような気持ちだった。
しかし、次の瞬間にはハッと自分の行為の愚かさに気づく。
彼がその光に気づいたとして、どうなるというんだ?
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