第一章

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 ペットボトルを元に戻すと「んじゃ俺、部活戻る。また明日な」と手を振り、ばたばたと足音をたてて小笠原は帰っていった。  まるで一陣の風のような、あっという間の出来事。  どきどきと音を立てる心臓はまだ鎮まらない。春臣は今しがた見たばかりの小笠原の姿を心の中で反芻してみた。  去年同じクラスだった時は数センチしか違わなかったはずの身長は、久しぶりに間近で見ると春臣が少し見上げなければいけないほど伸びていた。体格も骨ばった指も、記憶の中の小笠原より数段男らしくなったのではないだろうか。  すっかり足音が遠のいた後、ペットボトルを手に取ると、キャップを外し、そっと口をつけた。飲み慣れたはずのスポーツドリンクは、背徳感のせいか、少し苦かった。  
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