第一章

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 春臣の所属する天文部では、雨天やひどい曇天の時を除きほぼ毎日太陽の黒点観測を行っている。天文部の長年の伝統でもあるそれは、夏休みや正月などの間も決して途切れることがない。継続観測こそが有効とされるこの地道な作業は、校外においてもそれなりの評価を得ていた。  毎年、誰がその係になるのかで天文部内には一悶着起こる。当番制にして交替で観測できれば何の問題もないのだが、観測者が頻繁に替わると観測パターンが 一定せずデータの精度が下がってしまう。それでどうしても一人の人間が休むことなく毎日観測を続けるという重責を負うことになるのだ。  推薦にするかジャンケンにするか、はたまたアミダにするかと部員たちが揉めている中、誰もが敬遠するその苦行を春臣はわざわざ買って出た。  不思議がる部員たちに春臣は「俺、太陽好きだし」と嘯いて見せた。  真偽のほどが些か不明な理由ではあるが、あまり詮索して機嫌を損ねて「やっぱ、やらない」と言われても困るので、誰もがそれで納得した。     
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