第五章

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 何人かずつグループになってブルーシートの上にごろりと寝転がり同じ方向の空を見上げる。ほどなくしてあちこちから「見えた!」だとか「見えなかった!」だとか歓声があがった。  小笠原も肉眼で流星を見るのは初めての経験だと言っていただけあって、一つめを見つけた時はかなり興奮した様子で「すげっ、今流れたの見たか!?」と隣に寝転がっていた春臣の腕を掴みぐいぐいと揺さぶったりした。  しかし、真っ暗闇の中でじっと仰向けに寝転んでいるだけという状況で睡魔が襲ってこないわけがない。そのうちそこかしこで健やかな寝息が聞こえ始めた。  春臣もきらりと星が流れるのを見つける度、なんとなく嬉しい気持ちになってそのひとつひとつを丁寧に記録表に書き込んでいたが、流星の流れる間隔が少し長くなると昼間の疲れも手伝ってうとうととし始めていた。  ちょいちょいと肩をつつかれ、はっと目を開くと暗がりの中で小笠原が自分の顔をのぞきこんでいた。 「ちょっと、抜け出さないか?」  きらきらと子供のように瞳を輝かせて耳元で囁く小笠原に、春臣の心臓は途端にどきどきと暴れだした。
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