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藤岡は春臣をネオンが煌々と輝く、いかがわしいホテル街のある駅の裏通りの方向へといざなった。春臣は俯きがちに歩き、それに従う。
「今井?」
聞き覚えのある声に顔をあげると、新堀と中屋敷の二人が立っていた。
「なんで……」
こんな姿を知り合いに見られたくなかった。春臣は青褪めた。唇がわななき、足が震える。
「最初、わかんなかった。普段と全然雰囲気違うし。中屋敷が絶対間違いないっていうから声掛けたけど、ほんと今井なんだ。へぇ、変われば変わるもんだ」
物珍しそうにしげしげと春臣を見ている新堀と、相変わらずの無表情でつったっている中屋敷。頭が真っ白になり何の言い訳も浮かばない。
「ハル、こちらお友達?」
藤岡に耳元に息を吹き込まれるように尋ねられて、さらに身がすくむ。
「あ……」
「俺たち、今からそこのゲーセンでちょっと遊ぼうと思ってたんだけど、今井も一緒に行かないか?」
突然、中屋敷が口を開いた。
「そうだな。今井も一緒に行こうぜ」
新堀もぽんと手を打ち、それに賛成する。普段なら、こんなことを強引に決めてしまう二人ではない。藤岡の存在をまるで無視するように、中屋敷が動転する春臣の腕を取った。
「とにかく来い」
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