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第九章
春臣は翌日も、いつも通り地学室に来た。
自分の想いを無理矢理なかった事にしてしまおうとするのは諦めた。結局は藤岡に抱かれるという馬鹿な考えも、楽なほうに逃げようとしていただけなのだ。自分を傷つけることで覆い隠すようにして小笠原のことを忘れようとするのは、違うと気づいた。それこそ安易な方法で誤魔化そうとしてはいけない。小笠原が好きだ、というのはまぎれもない事実なのだ。ただ、太陽観測を始めて小笠原の姿を目で追いかけていた最初の頃に戻るだけだ。胸の中に切なくなるような想いを秘めて、何事もないような顔をして日々を過ごしていくだけ。
後悔はしていない。これが自分に課された罰なのだと、春臣は受け入れることにしたのだ。
南側の窓を開け放ち、重いシーロスタットを抱え上げそっと窓際に設置する。
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