第九章

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 春臣は小笠原が何を言い出すのかわからず曖昧に頷いた。 「当然だよな、毎日同じ時間帯に同じ場所で同じ方角にあるものを観測してるんだから、反射鏡の角度がそうずれる事はない。だから、不思議に思ったんだ。最初に今井が太陽観測してるんだって知った日、偶然この反射鏡の光が当たったと思ってたけど」  小笠原が何を言おうとしているのか、薄々わかりはじめ春臣は青褪めた。 「さっき、グラウンドにいる今井に光を当てて確認したら、やっぱりこの反射鏡をぐるっと……、まるっきり裏返しになるくらい回転させないとグラウンドに光が届くことはないんだ」  小笠原は説明しながら、同じようにぐるりと反射鏡を回転させた。春臣はまるで自分の罪を暴かれるようにただ呆然とその様子を眺めていた。 「あの日、俺が今井の存在に気づいたのは偶然じゃなかった。あれは、今井がわざわざ俺に気づかせるためにしたことだったんだって」 「そ、そんな事……」 「どうしてそんな事をしたのか、俺はそれが知りたいんだ。教えて?」  まっすぐな瞳にみつめられて、追い詰められているようで春臣は思わず後ずさる。小笠原に暗に、お前も俺を意識していたのだろうと指摘されて、もう言い逃れはできないのだと悟った。     
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