第五章

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第五章

 太陽観測を終えた後は、丘の下の喫茶店まで下りて行きランチでも食べながらのんびりと涼をとる予定だった春臣だが、里中に頼まれて合宿の準備を手伝うことになった。  好奇心旺盛で何にでも首を突っ込む里中は、よく気も利くし物怖じしない性格なので、そういう所を部長から見込まれて合宿の準備係を任命されていたらしい。貸し布団屋が届けてくれた布団の数を確認し柔道部の道場に一つずつ並べたり、調理室の鍵を借りて中から炊飯器や食器類を拝借し地学室に運んだり、体育館の倉庫にあるブルーシートを屋上に持って上がったり、里中一人でどうするつもりだったのだという結構な力仕事の数々をこなした。  その点を里中に指摘すると、 「地学室に来れば今井がいるのわかってたし、そのうちみんな集まってくればなんとかなるかなぁと思って」  とあっけらかんと笑っている。最初から自分に手伝わせるつもりでいた里中に呆れると同時に、自分にはないおおらかでちゃっかりしている性格を少し羨ましくも思った。  そうして汗まみれになりながら手伝っているうちに、あっというまに集合時間が近づいた。  気がつけば、地学室には一年生の部員達がちらほらと集まり始めていた。     
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