3人が本棚に入れています
本棚に追加
名前もどこに住んでるのかも知らない。
けれど、この場所を共有する仲間みたいな意識からか、今はもうあえて聞こうともしなかった。
それは彼も同じだろうか。彼からも聞かれたことはなかった。
ただ、彼は一つ私と違う事をする。
いつも彼が持っているのはスケッチブックと色鉛筆。
それで下からみる桜をスケッチするのだ。
毎年同じ場所から見上げて書いているのに、なぜかその絵は毎回違う印象を受ける。
私は気にしないふりをしながら、彼が熱心に書く姿をちらちらと覗き見する。
そのスケッチは毎日、桜が散るまで続けられる。
それもまた変わらない日課だった。
最初のコメントを投稿しよう!