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止められるのは自分しかいないのだ。
真っ白な壁と、薬臭い部屋の中でユーコ・ミナトは目を覚ました。
「あ、ユーコ。気が付いた?」
心配そうにユーコを覗き込むのは、まだ幼い少年のルイ・ドービーである。
ユーコとは正反対の金色の髪が、彼の頬で揺れる。
「…どれくらい?」
「今回は3日。」
「そう」
ユーコの右腕には輸血パックと、左腕には管と大きな機械が繋がれ、管の中には自分の血液が送り出されている。
それは血液を濾過する透析のような機械で、ユーコの血液の中に混じった麻薬物質『リゼルドキシン』を除去するために必ず必要なものであった。
機械が低い唸り声をあげている中、消え入りそうな声でルイに尋ねた。
「状況は?」
ユーコが定まらない視点でルイを見ると、ルイはポケットの中から小さなデバイスを取り出す。
拡大されたレーザーモニターに映し出されているのは、ワンダーウィール、もとい、今はチョルトボコレソと呼ばれている敵機と戦う2体の戦闘機だった。
「今日は僕の出陣はなさそうだから、ユーコのところにきたんだ。」
「そう…。」
モニターの中で戦う二人を、考えの追いつかない頭でぼんやりと眺めている。
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