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「あー…………あー、君、そこでいったい何をやっているのかな?」
季節は春。気持ちのいい陽気と爽やかな風に影響されて俺は桜を見に来ていた。
桜の木の下での食事を楽しみにしていたのだがここである事件が起きた。
そう。
今俺は頭を人差し指で押さえて唸っているのだが。
なんというか。
ええ。
「何て言うのですかね、くふふ、そう唐突に埋まってみたくなりまして……ね」
幼女がね、ディグダのようにあるいは土竜のように縦方向に埋まっていまして。
これがまた可愛いのでお前を主食に弁当をおかずに桜の花をデザートにしてなにもかも完食してやろうか、なんて。
全く思っていませんが思考がバグを起こしてアホなことを思いたくなるくらいの現場には直面しています。
「埋まってく?」
二言目に、どこの言語なのか理解も判別も不能な宇宙言語染みたコードが飛び出してきた。
俺はどんな顔をしていたのだろうか?
「じゃあ、遠慮なく」
それから、冷静になるまで俺は幼女の隣の、桜の木の下に、同じく縦方向に埋まって、世間話をしていたそうな。
「一緒に土に還る?」
「それは遠慮しときます」
「そう…………残念」
幼女は一人土のなかに還っていきました。
なんとなく、俺は土をかけてあげました。
ああ、きっとアレなのだろう。
桜の木の下には死体が埋まっている。
幽霊だったのだろう。
「窒息しちゃうから埋めないで」
「あ、はい」
…………。
さて、それじゃあ俺も土に埋まってみますか。
分解と再構築。
還ることで孵ってくる。
イニシエーションを経ることで俺は再び目覚めたときにちょっとした再起動によるデータのアップデートを終えているのだろう。
「死んじゃうよ」
「…………。どうやらシミュレーションは終わりのようだ」
縁起が悪いことを嫌っている様子であった。
桜の木の下には死体が埋まっている。
なんとなく、その言葉がそのときに頭に浮かんだ。
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