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3.
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はなっ!!
自分と海野の間に入った花南の躰を背後から抱き寄せ、領はそのままくるりと躰を回し、海野に背を向けた。
おれが欲していたのは、はなの面輪じゃない。はなの心だ。
すべての風景が消え、ただ空間に、散り急ぐ桜の花びらが舞い続ける。
――痛みが背中を覆う。
はな……あの時に云うことのなかった言の葉……。
それでも会いたいと希ってくれたはなは、花南としてここに在る。
「領!?」
「はな、愛しているから……」
花南の耳もとにそう告げた瞬間に、重石が取れたように領の心が軽くなる。
領の腕に包まれたまま、花南は躰の向きを変え、その瞳に見入った。
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