線香花火

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 僕はごろりと寝返りを打ち、思考をリセットする。もうずっとこの調子だ。昨日から学校は始まってしまったというのに、僕は起き上がれずにいる。  夏休みは終わってしまった。線香花火の火は消えてしまった。――シアンは、死んでしまった。  それはきっと悲しいことだ。悲しいことの、はずだ。でも僕は、涙を流すことができない。心が空っぽになってしまったかのように、何も感じなくなってしまったのかもしれない。しかしそれなら、この胸の痛みは一体何なのだろう。  無意識のうちに溜息が漏れる。――そういえば前にシアンが、溜息をつくと幸せが逃げていくって言ってたっけ。  満開の花が風に揺れるような、いつもの彼女の笑顔が脳裏に浮かび、胸が苦しくなる。呼吸が苦しくなる。  いっそ大声で泣き喚くことができたら、楽になれるのかもしれない。  そう思うのに、涙は一滴も流れない。まるで、感情ががらりと欠け落ちてしまったかのようだ。人が一人死ぬというのは、それだけ大きなことなのかもしれない。僕だけ時間が止まってしまったかのように錯覚する。もう何日も光を見ていない。いや、光なんてもう無くしてしまった。無くした光を求めたって、虚しいだけだ。     
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