線香花火

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 だらだらとどうしようもない思考を巡らせて、布団の中で体を丸める。こんなことをしていても、時間だけが過ぎていくだけだ。そんなことは分かっている。 ずきり、と胸が痛む。張り裂けそうなほど痛む。どうして、こんなふうに痛むんだろう。彼女が死んでしまったから? ……分からない。きっと、考えてはいけない。考えてはいけないんだ。 僕はそっと体を起こした。ぐちゃぐちゃとまとまらない思考が頭の中を埋め尽くしていて、おかしくなりそうだ。 約一週間ぶりにカーテンを全開にし、その眩しさに目を細める。夏休みが終わっても、太陽は相変わらず強い日差しを僕に浴びせてきた。部屋の中にいても、じりじりと肌を焦がしてくるように感じた。 がちゃり、と扉を開ける。とにかく動かないと、苦しさに押し潰されてしまいそうだ。 リビングには既に誰もいなかった。テーブルの上には、母親のメモと朝食が置かれている。それを見て初めて、自分が空腹だということに気が付いた。驚いて時計を見ると、十一時を指している。空腹なはずだ。 朝食か昼食か分からない食事を済ませ、郵便受けを確認しに玄関へ向かう。すると、新聞と一緒に一通の封筒が入っていた。差出人の名前は、風花シアン。     
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