線香花火

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僕は、今になってようやく理解した。彼女がいつも、あんなに好奇心に満ちた目で僕を見ていた理由が。あの時、シアンが何処か寂しそうに笑っていた理由が。今、僕の胸が張り裂けるように痛む理由が。 僕は、シアンのことが好きだったんだ。シアンの澄んだ声も、切れ長の大きくて綺麗な瞳も、満開の花が風に揺れるような笑顔も、突然の不思議な質問も、不器用で回りくどい優しさも全部含めて、ずっと前から好きだったんだ。 これからも、ずっと一緒にいたかった。ずっと一緒にいてほしかった。本当に僕は、彼女が隣で笑っていてくれるだけで、よかったのに。 僕はずっと、シアンに恋をしていた。そして、それに気付くのが遅すぎた。いつでも伝えられたのに。伝えられたはずなのに。彼女はずっと、隣にいたのに。 もう少し早ければ伝えられたかもしれない想いは、言葉は、もう彼女には届かない。たった二文字の簡単な言葉、「好き」という言葉だけ、伝えられなかった。 僕は涙を拭った。涙は当分枯れそうになく、呼吸もしゃくり上げるようで苦しい。きっと、ひどい顔をしているだろう。 線香花火を手に取る。よく見ると、花火にはそれとよく似た色の紙が巻き付けられていた。それを丁寧に剥がし、裏面を見る。そこには、小さく控えめで、今にも消えてしまいそうな字が並んでいた。 「……本当に、不器用なんだから」     
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