1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は、今になってようやく理解した。彼女がいつも、あんなに好奇心に満ちた目で僕を見ていた理由が。あの時、シアンが何処か寂しそうに笑っていた理由が。今、僕の胸が張り裂けるように痛む理由が。
僕は、シアンのことが好きだったんだ。シアンの澄んだ声も、切れ長の大きくて綺麗な瞳も、満開の花が風に揺れるような笑顔も、突然の不思議な質問も、不器用で回りくどい優しさも全部含めて、ずっと前から好きだったんだ。
これからも、ずっと一緒にいたかった。ずっと一緒にいてほしかった。本当に僕は、彼女が隣で笑っていてくれるだけで、よかったのに。
僕はずっと、シアンに恋をしていた。そして、それに気付くのが遅すぎた。いつでも伝えられたのに。伝えられたはずなのに。彼女はずっと、隣にいたのに。
もう少し早ければ伝えられたかもしれない想いは、言葉は、もう彼女には届かない。たった二文字の簡単な言葉、「好き」という言葉だけ、伝えられなかった。
僕は涙を拭った。涙は当分枯れそうになく、呼吸もしゃくり上げるようで苦しい。きっと、ひどい顔をしているだろう。
線香花火を手に取る。よく見ると、花火にはそれとよく似た色の紙が巻き付けられていた。それを丁寧に剥がし、裏面を見る。そこには、小さく控えめで、今にも消えてしまいそうな字が並んでいた。
「……本当に、不器用なんだから」
最初のコメントを投稿しよう!