線香花火

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 手紙を書き終えた私は、そっとペンを置いた。我ながら、稚拙で笑ってしまう。もう一度書き直そうかと考えたが、便箋はちょうどなくなってしまった。生憎、買いに行く時間もない。時計は既に十時を指している。  私は小さく息を吐いた。例え稚拙だとしても、彼なら全て読んでくれるだろう。ハイト君は、優しくてお人好しだから。  手紙をもう一度読み返し、誤字脱字がないか確認する。人生最後の手紙に間違いがあったら、死んでも死にきれない。  手紙にはあんなことを書いたが、私は明日自分が死ぬと確信している。今まで何度も自分の結末を見てきたが、どれだけ願っても死は免れなかった。だからきっと、結末は変わらない。  もちろん、死ぬのが怖くない訳ではない。でも、何度も見た結末だからか、不思議と不安は少なかった。 手紙に書いたことは、それ以外は本心だ。最後にバイバイと書いたのは、もう会えないと分かっているから。私なりのけじめだ。  今日彼にあんな質問を投げたのは、自分が何をすればいいのか分からなかったからだ。でも、彼のおかげで自分に足りないものが分かった気がする。     
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