1人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
すると、シアンはころころと笑った。いつもと同じ、満開の花が風に揺れるような笑みだ。
「理由なんてないよ。ただ、気になっただけ」
彼女が嘘をついている様子はないが、その答えは何となく腑に落ちなかった。
「それで、どうするの?」
早く答えが知りたいと言わんばかりに再度尋ねるシアン。その瞳の奥には好奇心が渦巻いている。やはりいつものシアンだ。
僕は少し考え込んでから、徐に口を開いた。
「そうだね……やっぱり、みんなにありがとうって伝えに行きたいかな」
そう真面目に答える。彼女はにっこりと笑った。
「ハイト君らしい答えだね。お人好しで、優しい答え」
シアンは微笑んでいたが、それは何処か寂しそうな笑みだった。
「じゃあ、シアンはどうするんだ?」
このままだと彼女が消えてしまいそうな気がして、僕は慌ててそう言った。シアンは一瞬きょとんとした表情を浮かべてから、元の柔らかい笑みに戻った。
「私? 私は……いつもと同じように過ごしたいかな」
悩むような仕草を見せながらも、シアンはそう言った。
「どうして?」
不思議に思って尋ねると、彼女は満面の笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!