線香花火

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「そうだね。シアンがそう言うなら間違いないな」  シアンが楽しいと言うのなら、それは絶対に楽しいことだ。そんな確信に似た何かを抱き、ぼくはうなずいた。  こうしてぼくらは、思い思いに花火を楽しんだ。一本ずつ花火を楽しんだり、両手で花火を持ったり、光で文字や絵を書いたり。最初は少し多いかもしれないと思っていたが、予想以上に花火はあっという間になくなっていった。  最後に残ったのは線香花火だ。僕達はしゃがみ込んで、そっと花火を持った。 「どっちが長く持つか競争しようよ」 「いいよ」  火をつけると、線香花火は控えめに花を咲かせた。しばらくすると、バチバチと強めに光を散らし始める。火の華を眺めながら、シアンはぽつりと呟いた。 「ハイト君は、線香花火好き?」  線香花火の仄かな光に照らされるシアンの横顔がとても綺麗に見えて、僕は少しどきっとした。 「うん。好きだよ。すぐに消えてしまう儚さが綺麗だから。シアンは?」 シアンの目は相変わらず花火に向けられている。その瞳の中には、きらきらと星が煌めいていた。 「私も好きだよ。派手過ぎる光は眩しいから。私には、このくらいの光がちょうどいいの」     
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