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シアンが僕の方を見て微笑む。途端、彼女の線香花火の火はぽとりと落ちてしまった。
「あ、落ちた」
シアンが間の抜けた声を出す。それがなんだかおかしくて、僕はくすくすと笑った。体が揺れたせいか、僕の線香花火の火も落ちてしまった。
「ああ、落ちた」
僕の声もひどく間が抜けていて、僕達は顔を見合わせて笑った。
笑い過ぎて出た涙を拭きながら、シアンはふと改まった口調で言った。
「ハイト君。今日は、ありがとう」
僕はにっこりと微笑んだ。
「どういたしまして。こちらこそ、誘ってくれてありがとう、シアン」
シアンは少し俯いた。照れているのだろうか。蝋燭の炎のせいか、彼女の白い顔が赤く見えた。
「じゃあ、二回戦するか」
「うん」
明るく声を掛けると、シアンは嬉しそうに大きく頷いた。
線香花火は、あっという間になくなってしまった。
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