528人が本棚に入れています
本棚に追加
「はるま!!」
脳裏には、出会った頃からの素敵な思い出が走馬燈のように流れていく。
愛してると言いたくて、だけどやはり今それを言うには違う気がして。
私が躊躇っていると、
『ほら、最後だからさ。
あんたも何か言うことあるんじゃないの?』
と、晴馬が私の背中を押した。
「……私こそ、ずっと今まで助けてくれてありがとう。
……さよなら」
愛をこめて、最後の言葉をやっと絞り出した。
プツン、
通話が切れて、私はベランダの床に座り込んだ。
夕闇の都内上空に珍しく鮮明な三日月が出ていた。
同じ空を見て、同じ月を見て、同じ時の中にいて、それはどちらかが死ぬまで終わらない。
どこかで、彼は生きている。
今は、それだけで十分だ、と感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!