第5章 愛するということ

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話し合いが滞るなか義父の葬儀に参列しようと、クリーニングから戻ったばかりの喪服に着替えていた時だ。 私のスマホに着信があった。 葉月倫子だ。 「もしもし」 「私に行かせて貰えませんか?」 間髪入れない勢いがある。 そこに彼女の覚悟を感じた。 「行くって、葬儀に?」 「はい。私が和利さんの妻として彼の隣にいたいんです。彼を支えてあげたいんです」 驚きしかない。 あんな男を支えたいと、私は思えない。 「行ってくれるなら、助かる」 私は本音では行きたくないのだから、これは好都合だ。 この際だから、離婚も前向きに考えて良いのかもしれない。 気付けばビジネスを横取りする夢は叶っているし、 高津は自ら墓穴を掘って、私に養われているような状態だ。ビジネスオーナーと雇われ社長で利害が一致したなら、夫婦である必要なんかない。 「そのまま、あんたに高津を引き取ってもらおっかな。あんたさえ良ければ、だけど」 「本気にしても、良いんですか?」 「良いに決まってるわよ。 私じゃまた見苦しい喧嘩になるだけだわ」 電話を切って直ぐに高津から着信がきた。 「お前、勝手になんてことを」 「葉月はあなたを相当真剣に愛してるわ。 私が身を引けば、ハッピーエンドでしよ?」 「俺の気持ちはどうなる?お前は本当に冷たい女だな!」 この期に及んでまだ女々しいことを。 「私はあなたを愛せない。怒られるなんて筋違いよ」 「俺がお前のためにどれだけ骨を折ってきたか、わからないのか?」 「わかってるわ。晴馬を愛人にしてくれた。あれは本当に感謝してる。だけど彼は私とは違って、自分に嘘つきながら生きられない子なのよ。私は彼から多くを学んだわ」 「ふざけるな!」 「大真面目よ。葉月の真っ直ぐな愛を受け止めてみて。今世紀中にあんな一途な子には、もう二度と出会えないわよ」 「俺はお前しか愛せない!」 「あら、それは嘘よ。あなたは葉月を愛してるでしょ?」 駄々っ子を嗜めるように私は優しくて語りかけた。
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